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退職代行を使われたらどうする?知っておくべき会社の対処法

更新日:2025.06.11

退職代行サービスから連絡を受けた際、企業はまず従業員本人の退職意思を正確に確認することが重要です。直接の連絡が難しい場合は、退職代行業者を通じて、本人からの委任状の提出を求めるなど、意思確認を慎重に行う必要があります。これらの初動対応を適切に行うことで、その後の退職手続きをスムーズに進め、企業側の不要なトラブルを避けることにもつながります。本記事では、こうした退職代行を使われた際の企業の対応について解説していきます。

退職代行に関する基本知識

退職代行業者からの連絡があった場合、企業はまず回答書を作成し送付することが推奨されます。回答書を作成することは、会社が退職申し出に対して適切に対応しているという客観的な証拠を残すことにつながります。回答書には、退職の申し出を受け取った旨、今後の手続きの流れ(退職届の提出依頼、貸与品の返却方法など)、そして会社側の今後の連絡窓口などを記載します。記録を残すためにも、メールや書面といった形で送付することが望ましいです。これにより、「言った、言わない」といった後々のトラブルを防ぐことができます。退職日については、引き継ぎ期間や手続きの進捗状況によって調整の可能性があることを明記しておくと良いでしょう。民間業者の場合は交渉権がないため、回答書はあくまで手続きに関する内容に留めるようにします。弁護士や労働組合の場合は交渉が可能なので、その点を踏まえた内容を検討します。

退職代行とは何か

退職代行とは、従業員が自身に代わって会社に退職の意思を伝えてもらうために利用する専門サービスのことを指します。仕事を辞めたいけれど、上司に直接伝えにくい、引き止めに遭うのが怖い、人間関係のトラブルを避けたいといった悩みを抱える方が利用することが多いです。退職代行サービスを利用することで、従業員本人が会社と直接やり取りする必要がなくなるため、精神的な負担を軽減し、スムーズな退職を目指すことができます。

このサービスは、単に退職の意思を伝えるだけでなく、サービスによっては退職日の調整や有給休暇の消化に関する交渉、さらには未払い賃金や残業代の請求など、退職に伴う様々な手続きや交渉を代行する場合もあります。 ただし、サービス内容や対応範囲は、運営している主体によって大きく異なります。 退職代行サービスは、弁護士事務所、労働組合、そして民間の退職代行サービスの3つの種類に分けられます。

それぞれのサービスには特徴があり、特に法的な交渉やトラブル対応の可否に違いがあります。企業として退職代行からの連絡を受けた際には、どの種類のサービスからの連絡であるかを確認し、その法的権限を理解した上で適切に対応することが重要になります。

退職代行サービスの主な種類

退職代行サービスは、運営する主体によって主に3つの種類に分けられます。1つ目は弁護士事務所、2つ目は労働組合(ユニオン)、そして3つ目は民間業者です。これらのサービスは、それぞれ対応できる範囲や法的な権限が異なります。企業として退職代行からの連絡を受けた際には、どの種類のサービスであるかを確認し、その性質に応じた対応をすることが重要です。民間業者に比べて、弁護士や労働組合は交渉権を持つため、退職条件や未払い賃金などに関する交渉が発生する可能性があります。

弁護士事務所
弁護士事務所が提供する退職代行サービスは、他のサービスと比べて高い法的専門性が特徴です。弁護士は法律に基づき、退職に関わる様々な手続きを労働者に代わって行うことができます。退職の意思表示はもちろんのこと、未払い賃金や残業代の請求、労働条件に関する会社との交渉など、法的な対応が必要な場面でその能力を発揮します。これにより、退職に伴う複雑なトラブルが発生した場合でも、法的に適切な解決へと導くことが可能です。

弁護士が退職代行に関与する場合、企業側も労働者の退職意思が確実であることを認識する必要があり、不当な退職拒否は法的リスクを伴います。 そのため、企業は冷静かつ慎重な対応が求められます。具体的には、退職日の調整や退職後の契約関係の整理などについて、弁護士と円滑なコミュニケーションを図ることが重要です。

実際に弁護士による退職代行を利用した労働者が未払い給与の支払いを求めて会社と交渉し、労働基準法や判例に基づいた請求を行った事例もあります。 こうした場合、弁護士は必要に応じて裁判手続きも辞さない構えで交渉に臨みます。企業としては、法令遵守を徹底し、迅速かつ誠実に対応することで、不必要な紛争を避けることができます。

また、弁護士事務所のサービスでは、労働問題に精通した専門家による内容証明郵便を用いた正式な通知や、退職後のトラブル発生を未然に防ぐための法的助言も期待できます。 企業は弁護士からの連絡に対して丁寧かつ迅速に対応し、必要な書類提出や貸与品の返却処理など、退職手続きを滞りなく進めることが求められます。

退職代行ユニオン
退職代行ユニオンは、労働組合法に基づいて設立された労働組合が運営する退職代行サービスです。大きな特徴は、労働組合が持つ団体交渉権を行使できる点にあります。これにより、従業員の代理として企業と直接交渉することが可能です。具体的には、未払い残業代の請求や退職条件の調整など、労働条件に関する様々な事項について話し合いを進めることができます。企業内に労働組合がない場合でも、外部の労働組合として加入し利用できるため、正社員や契約社員、派遣社員など、雇用形態に関わらず幅広い労働者が利用できるメリットがあります。

ただし、ユニオンはあくまで労働組合としての交渉代理権を有するものであり、法的な裁判代理権はありません。 そのため、交渉で解決に至らない場合に裁判手続きに進む場合は、別途弁護士に依頼する必要があります。企業側はユニオンからの要求に対し、労働基準法などの関連法規を踏まえて適切に対応することが求められます。誠実な対応は、労使間の不要なトラブルを防ぎ、円満な退職を促進することにつながります。また、外部労働組合が介入するケースは、企業の労働環境や制度を見直す良い機会となることもあります。

民間業者
民間の退職代行業者は、弁護士資格を持たない個人や法人が運営しており、その法的権限は限定的です。彼らは従業員本人に代わって、会社に退職の意思を伝達することを主な業務としています。退職日の交渉や未払い賃金、残業代の請求など、法的な交渉を伴う業務を行うことは弁護士法に抵触する非弁行為となるため行えません。

したがって、企業は民間の退職代行業者からこれらの交渉を持ちかけられた場合、原則として応じる必要はありません。あくまで「退職の意思を伝えに来た窓口」として対応し、その後の具体的な退職手続きについては、従業員本人と直接、または書面などを通じて進めることが重要です。

民間業者のサービスは比較的安価で迅速に対応できるというメリットがありますが、対応範囲に限界があることを企業側は理解しておくべきです。 依頼者である従業員が本当に退職を望んでいるのか、その意思確認を慎重に行い、委任状の提出を求めることも有効な手段です。 民間業者の中には信頼性に欠ける業者も存在するため、業者自体の身元を確認することも重要となります。

企業は、民間退職代行業者からの連絡に対して冷静かつ適切に対応し、従業員本人の意思を確認した上で、法的に問題のない範囲で退職手続きを進める必要があります。不当な要求には応じず、毅然とした態度で臨むことがトラブルを防ぐために大切です。

退職代行を使われる背景

退職代行サービスが利用される背景には、従業員が職場に直接退職の意思を伝えにくい様々な要因が存在します。特に、上司との関係性を含む職場の人間関係の悪化は大きな理由の一つとして挙げられます。厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果の概況」によると、転職者が前職を辞めた理由として、「職場の人間関係が好ましくなかった」と回答した人の割合は、男性で9.1%、女性で13.0%となっており、男女ともに離職理由の上位となっています。 このように、人間関係の悩みは退職を考える大きなきっかけとなり得ます。

また、パワーハラスメントや過度な叱責といった威圧的な言動が常態化している職場環境では、従業員は退職を申し出ることに心理的な抵抗を感じやすくなります。 さらに、労働時間の長さや休日・休暇が少ないといった労働条件の悪さも、従業員が退職を決意し、退職代行に頼る一因となります。 企業としては、こうした退職代行が利用される背景にある従業員の声に耳を傾け、職場環境の改善やコミュニケーションの円滑化に取り組むことが、退職代行の利用を減らすために重要となります。

退職代行を使われた際の企業の初動対応

退職代行サービスから連絡を受けた際、企業はまず冷静に対応することが重要です。初動で適切な対応をとることで、その後の手続きを円滑に進め、不要なトラブルを防ぐことができます。まず、連絡してきた退職代行業者の身元や資格を確認しましょう。弁護士、労働組合、民間業者では対応できる範囲が異なります。特に民間業者は法的な交渉権を持たないため、その性質を理解した上で対応方針を定める必要があります。

退職代行業者の身元や資格の確認

退職代行サービスから連絡があった場合、企業はまずその業者の身元と資格をしっかりと確認する必要があります。退職代行業者は主に弁護士事務所、労働組合、そして民間の一般業者の3種類に分けられ、それぞれ法律で認められている対応範囲が異なります。

そのため、退職代行業者から連絡を受けた際には、まず相手が弁護士であるか、労働組合であるか、あるいは民間業者であるかを確認しましょう。弁護士や労働組合であれば交渉権限を持つため、退職条件などについて話し合いを行うことが可能です。 しかし、民間業者であれば交渉に応じる必要はありません。

また、なりすましや嫌がらせの可能性も考慮し、退職代行業者が従業員本人の正式な依頼を受けているかどうかも確認が重要です。委任状や身分証明書のコピーの提出を求めるなどして、依頼が本人からのものであることを確認しましょう。 このように、退職代行業者の身元や資格を確認することは、その後の適切な対応を判断し、不要なトラブルを避けるために非常に重要です。

従業員本人の意思確認

退職代行サービスからの連絡を受けた際に最も重要なことの一つは、従業員本人の退職意思を正確に確認することです。これは、第三者によるなりすましや嫌がらせといった可能性も否定できないため、企業として必ず行うべき対応です。具体的には、退職代行業者に対して、従業員本人が正式に退職代行を依頼したことを証明する委任状や、従業員本人の身分証明書のコピーなどの提出を求めることが有効です。これらの書類は、退職の意思が従業員本人のものであることの客観的な証拠となります。

もし、退職代行業者からこれらの書類の提出が得られない場合や、依頼が本人からのものであるか不確かな場合は、電話やメールなど可能な限りの手段を用いて従業員本人に直接連絡を取り、退職の意思があるのかを確認する必要があります。ただし、退職代行を利用している時点で、従業員本人が会社との直接のやり取りを避けている可能性が高いため、連絡が取れないことも想定されます。その際は、本人からの明確な意思確認ができない限り、退職手続きを進めることが難しい場合があることを退職代行業者に伝えることも検討します。このように、従業員本人の意思確認を慎重に行うことは、その後の退職手続きを円滑に進め、不必要なトラブルを避けるために非常に重要です。

従業員の雇用形態の確認

退職代行からの連絡を受けた際、企業はまず従業員の雇用形態を確認することが重要です。これは、無期契約社員か有期契約社員(契約社員やパート・アルバイトなど)かによって、退職に関する法的なルールが異なるためです。民法では、期間の定めのない雇用契約(無期契約)の場合、労働者は原則として退職希望日の2週間前までに申し出れば退職が可能とされています。就業規則にこれより長い期間が定められている場合でも、民法の規定が優先される場合があります。

一方、期間の定めのある雇用契約(有期契約)の場合、原則として契約期間の途中で退職することはできません。ただし、病気やハラスメントなど「やむを得ない事由」がある場合に限り、契約期間中でも退職が認められることがあります。 企業は、従業員がどちらの雇用形態であるかを雇用契約書などで確認し、それに沿った法的な手続きを進める必要があります。

雇用形態によって退職手続きの基本的な流れに大きな違いはありませんが、有期契約の場合は契約期間や「やむを得ない事由」の有無を確認し、対応を検討することが重要です。 この確認を怠ると、その後の退職処理や法的なトラブルにつながる可能性があるため、慎重な対応が求められます。

回答書の作成

退職代行サービスから連絡を受けた際は、会社としての正式な回答を書面またはメールで作成し、送付することが重要です。回答書には、退職の申し出を受け取ったこと、今後の退職手続きの流れ、会社への連絡方法などを明記します。これにより、退職に関する記録を残し、後々の誤解やトラブルを防ぐことにつながります。特に民間業者の場合、交渉権がないため、手続きに関する事務的な内容に留めることが適切です。弁護士や労働組合の場合は交渉が可能なため、その権限を踏まえた内容を検討します。退職日については、法的な規定や就業規則に基づき調整の可能性があることも記載しておくと良いでしょう。

退職手続きにおける企業の対応

退職代行を利用された場合でも、企業は適切な退職手続きを進める必要があります。退職届の受理、貸与物の返却確認、社会保険や税金の手続き、必要な書類の発行など、企業側で責任を持って対応すべき事項は多岐にわたります。これらの手続きを円滑に行うことで、退職者とのトラブルを防ぎ、企業の信頼性を維持することができます。

退職届の提出依頼

退職届は、従業員が正式に退職の意思を企業に伝えるための重要な書類です。退職代行サービスを利用された場合でも、企業側は退職届の提出を依頼することが一般的です。会社によっては、指定の書式がある場合もありますので、退職代行業者を通じてその旨を伝え、指定の書式に沿った提出を求めましょう。提出された退職届に不備や記載漏れがあった際には、従業員本人に再作成を依頼する必要があります。

退職届の提出方法は、近年多様化しており、郵送や電子メールでの受け付けを認めている企業も増えています。特に退職代行を利用している場合、従業員本人との直接のやり取りが難しいため、郵送やメールでの提出は有効な手段となり得ます。退職届が提出された後は、企業側で内容を確認し、問題がなければ退職手続きが進められます。正確な退職届の提出は、円滑な事務手続きのために不可欠であり、法的なトラブルを避ける上でも重要となります。

なお、法律上、期間の定めのない雇用契約の場合、退職の意思表示は口頭でも可能とされていますが、言った言わないのトラブルを防ぐためにも、書面である退職届の提出を求めることが企業にとって望ましいです。退職届は、企業が従業員の退職意思を正式に確認し、その後の手続きを進める上で重要な役割を果たします。

貸与物の返却対応

退職代行を利用して従業員が退職する場合でも、企業から貸与している物品の返却は必ず行ってもらう必要があります。パソコン、スマートフォン、社員証、制服、健康保険証などが主な貸与物として挙げられます。これらの貸与物は企業の資産であり、特に情報機器については機密情報漏洩のリスクもあるため、確実な返却が重要です。

返却方法については、従業員本人が会社に出向くことが難しいケースがほとんどのため、郵送での返却を依頼するのが一般的です。 郵送にかかる費用は退職者本人に負担してもらうことが適切です。 退職代行業者を通じて、貸与物の内容、返却方法、期日などを明確に伝えましょう。 返却が遅れる場合は、必要に応じて退職代行業者を通じて督促を行います。

また、会社に置かれたままになっている従業員の私物についても、返却方法を確認し、適切に処理を進める必要があります。 私物の量が多い場合や、従業員が返却を希望しない場合は、廃棄の意向を確認することも可能です。退職の際でも、許可を得ず勝手に廃棄は行えませんので、必ず確認を取るようにしましょう。

貸与物の返却を怠った場合、企業は所有権に基づいて返還請求を行うことができます。 また、就業規則に返却義務が定められている場合は、労働契約に基づく返還請求も可能です。 返却されない状況が続くと、損害賠償請求につながる可能性もゼロではありません。

退職届の受領と手続きの進行

退職届が企業に提出されたら、人事担当者は速やかに退職手続きを進めます。これには、退職日や有給休暇の消化に関する最終確認、業務の引継ぎ状況の確認などが含まれます。社会保険や雇用保険の資格喪失手続きも、退職日の翌日から速やかに行う必要があります。健康保険証の返却依頼も忘れずに行いましょう。

また、退職者へ交付する必要がある書類として、源泉徴収票や雇用保険被保険者離職証明書(離職票)、退職証明書などがあります。これらの書類は、退職後の各種手続きに必要となるため、遅滞なく発行し、退職代行業者を通じて退職者本人へ確実に渡るように手配します。

退職代行を使われた場合でも、企業は法的な手続きを遵守し、退職者との間で不要なトラブルが発生しないよう、正確かつ迅速な対応を心がける必要があります。すべての手続きを円滑に進めることで、企業としての信頼性を保つことにも繋がります。

有給休暇の消化確認

有給休暇は労働基準法によって定められた労働者の権利であり、退職時であっても残っている日数をすべて消化することが可能です。会社側は、退職予定者から有給休暇取得の申し出があった場合、時季変更権を行使できる例外的なケースを除き、原則として拒否することはできません。特に退職時の有給消化については、会社側が時季変更権を行使できる余地はほぼありません。

2019年4月からは、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、年に5日以上の有給休暇を取得させることが企業の義務となっています。退職代行を通じて退職の意思表示があった場合、企業はまず従業員の有給休暇の残日数を確認し、退職日までの間にすべて消化できるよう調整を検討する必要があります。有給休暇の残日数を間違って把握していると、退職までに消化しきれない可能性も出てきます。 退職日までに消化しきれなかった有給休暇は、退職と同時に消滅するのが原則ですが、中には買取制度を設けている企業もあります。

有給休暇の消化は、退職代行サービスが会社との交渉の一部として対応することもあります。 民間業者の場合は交渉権がありませんが、弁護士や労働組合の場合は有給消化についても会社と交渉することが可能です。企業としては、労使間の不要なトラブルを防ぐためにも、有給休暇に関するルールを正確に理解し、適切に対応することが重要です。

未払い賃金や退職金の取り扱い

退職代行サービスを利用した場合でも、労働基準法に基づき、働いた分の賃金は全額支払われる必要があります。会社側には従業員に給与を支払う義務があり、退職代行を利用したことを理由に支払いを拒否することはできません。給与支払日が退職後になる場合でも、労働者からの請求があれば退職後7日以内に支払う義務があります。支払いが遅れた場合は、年14.6%を超えない範囲で遅延利息が発生します。

退職金については、法律で支給が義務付けられているものではありませんが、就業規則や退職金規定に定めがある場合は、その規定に基づいて支払う必要があります。 「退職代行サービスを使ったから支払わない」ということは原則として認められません。 ただし、就業規則に勤続年数による支給条件や、懲戒解雇に準ずる場合の不支給規定などがある場合は、それに従って判断されます。

未払い賃金や退職金の請求に関しては、弁護士が運営する退職代行サービスであれば、依頼者に代わって会社と交渉し、請求を行うことが可能です。 民間業者には法的な交渉権がないため、未払い賃金や退職金に関する交渉を依頼することはできません。 したがって、これらの金銭的な請求も同時に行いたい場合は、弁護士に退職代行を依頼するのが有効な手段です。

業務引継ぎの指示について

直接対面して説明することが難しい場合でも、書面やメールなど、記録に残る適切な方法で引継ぎが必要な業務内容やその期限を具体的に指定しましょう。また、引継ぎが不十分だった場合の責任の所在についても、可能な範囲で明確にしておくことが望ましいです。引継ぎが滞ると、後任者の業務に支障をきたし、企業全体の業務効率や顧客への影響も懸念されます。そのため、退職代行サービスを利用している状況であっても、最低限の協力を得られるように配慮しつつ、会社側で業務内容のリストアップや手順書の準備を進めるなど、必要な情報を確実に引き継げるよう努めることが重要です。担当者間の情報共有を密に行い、不明点がないか確認する体制を構築することも円滑な引継ぎには不可欠となります。引継ぎは法律上の明確な義務として定められているわけではありませんが、会社と退職者双方にとって不要なトラブルを避けるためにも、誠実な対応が求められます。

退職代行を使われた際の注意点

退職代行サービスからの連絡を受けた場合、企業は冷静かつ慎重に対応する必要があります。サービスの種類(弁護士、労働組合、民間業者)によって法的権限が異なるため、まずは連絡してきた業者の身元や資格を確認することが重要です。特に民間の退職代行サービスには交渉権がないことを理解し、対応方針を定めましょう。また、従業員本人の退職意思の確認を慎重に行い、不当な退職拒否や本人確認の軽視は法的なトラブルにつながる可能性があるため注意が必要です。

民間の退職代行サービスの場合は交渉をしない

民間の退職代行サービスは、弁護士資格を持たない個人や企業が運営しており、その業務範囲は法律によって制限されています。彼らに許されているのは、あくまで従業員本人の退職の意思を会社に伝える「使者」としての役割です。そのため、退職日の調整、未払い賃金や残業代の請求、有給休暇の消化に関する交渉など、法的な判断や交渉が必要となる業務を行うことはできません。これらの行為は弁護士法に違反する「非弁行為」にあたる可能性があり、行うと違法となります。したがって、企業が民間の退職代行業者からこれらの交渉を持ちかけられたとしても、応じる法的義務はありません。

企業としては、民間の退職代行サービスに対しては、退職意思の伝達という限定的な範囲で対応し、その後の具体的な退職手続きについては、従業員本人と直接、または書面などの記録に残る形で行うことが重要です。もし交渉が必要な場合は、弁護士や労働組合といった、法律で認められた交渉権限を持つ相手を通して行う必要があります。民間の退職代行サービスに過度な要求に応じたり、法的根拠のない交渉に乗じたりしないよう注意が必要です。

法的リスクと注意点

退職代行サービスからの連絡を受けた場合、企業は法的なリスクに注意が必要です。不当な退職拒否は労働契約法に違反する可能性があり、損害賠償請求につながるリスクがあります。また、従業員本人の退職意思の確認を怠った場合、後々トラブルになる可能性も否定できません。特に弁護士や労働組合が退職代行を行っている場合は、法的な交渉権限を持っているため、企業側も法律に基づいた適切な対応を求められます。安易な対応や感情的な対応は避け、冷静かつ法的な視点を持って対応することが重要です。

雇用形態によって退職に関するルールが異なる点にも注意が必要です。期間の定めのない雇用契約の場合は原則2週間前の申し出で退職が認められますが、有期契約の場合は原則として契約期間中の退職は認められていません。例外的に「やむを得ない事由」がある場合に退職が可能となりますが、その判断には法的な検討が必要です。これらの法的なルールを理解せず不適切な対応をとると、法的なトラブルに発展するリスクが高まります。

企業は、退職代行サービスからの連絡に対しては、まずは身元や資格を確認し、その法的権限に応じた対応方針を定めることが重要です。必要に応じて弁護士や社会保険労務士といった専門家に相談することも有効な手段です。法令遵守を徹底し、透明性の高い手続きを行うことで、法的なリスクを最小限に抑え、円滑な退職処理を目指すことができます。

感情的な対応をしない

退職代行サービスから連絡を受けた際に、企業側が感情的な対応をすることは避けるべき重要な点です。突然の連絡に驚きや不快感を覚えることもあるかもしれませんが、感情的な言動は、その後の手続きを複雑にするだけでなく、ハラスメントと見なされ、新たなトラブルに発展するリスクを高めます。

特に、従業員への怒鳴りつけや威圧的な態度は厳禁です。冷静かつ法的な視点を持って対応することが求められます。民間業者の場合は交渉権がないため、冷静に事務的な手続きを進めるようにしましょう。

他の従業員のフォローを行う

退職代行サービスを利用して従業員が退職した場合、企業側は残された他の従業員へのフォローを丁寧に行う必要があります。突然の退職は、周囲の従業員に業務負担の増加や少なからず心理的な動揺を与えうるためです。

具体的には、退職した従業員の業務を引き継ぐ担当者を決め、その業務内容や手順を明確に伝達します。引き継ぎがスムーズに進むよう、必要に応じてマニュアルの整備や関係者間の情報共有を徹底することが重要です。また、突然の退職理由について詮索するような雰囲気は避け、残った従業員が安心して働けるように配慮します。もし可能であれば、今回の退職がハラスメントや人間関係の悪化といった職場環境に起因するものでないか、他の従業員から匿名で意見を聞く機会を設けることも有効です。これにより、潜在的な問題を早期に発見し、職場環境の改善につなげることができます。従業員が抱える不安や不満に対し、会社として真摯に向き合い、適切なサポートを提供することが、組織全体の士気を維持し、その後の人材流出を防ぐためにも不可欠となります。

企業が取り組むべき「退職代行を使われない」ための対策

企業が退職代行を使われないようにするためには、従業員が安心して意見を伝えられる環境を整備することが重要です。定期的な面談や相談窓口の設置を通じて、従業員の不満や悩みを早期に把握し、改善に努めましょう。また、ハラスメント対策の徹底や、公正な評価制度、適切な労働時間管理なども、従業員の満足度を高め、退職代行に頼る必要のない職場づくりにつながります。

従業員との信頼関係構築

企業が従業員との間に強固な信頼関係を築くことは、退職代行を利用されないための重要な対策となります。信頼関係があれば、従業員は退職を考える前に、抱えている悩みや不満を上司や同僚に相談しやすくなるためです。 日頃から密なコミュニケーションを心がけることが、信頼関係構築の基盤となります。定期的な個人面談や1対1のミーティング(1on1)などを実施し、従業員の仕事に関する課題や個人的な悩み、キャリアに関する考えなどを丁寧にヒアリングすることが効果的です。

これにより、従業員は「会社は自分のことを気にかけてくれている」「自分の意見を聞いてくれる」と感じ、安心感が生まれます。また、ハラスメントの防止策を徹底し、従業員が安心して働ける環境を整備することも不可欠です。公正な人事評価制度や透明性のある昇給・昇格基準を設けることも、従業員の納得感を高め、会社への信頼に繋がります。 従業員が「この会社で働き続けたい」と思えるような、風通しの良い、心理的安全性の高い職場環境を作り上げることが、退職代行という選択肢をなくすことに繋がります。

退職代行を使われる要因の分析・改善

退職代行サービスが利用される背景には、従業員が会社に直接退職の意思を伝えにくい、様々な要因が複雑に絡み合っています。これらの要因を分析し、改善することは、退職代行の利用を減らすために不可欠です。まず、職場の人間関係の悪化やハラスメントは、退職代行が使われる大きな理由の一つです。特に、上司との関係性や、威圧的なコミュニケーションは、従業員が退職を言い出しにくいと感じる状況を生み出します。 また、長時間労働や休日・休暇が少ないといった労働条件の悪さも、従業員の不満を高め、退職を考えるきっかけとなります。

これらの問題を特定するためには、従業員との個別の面談や、匿名でのアンケート調査が有効です。面談では、従業員が抱える具体的な悩みや不満を丁寧に聞き取り、アンケートでは、より広範な意見や職場環境に関する現状を把握することができます。 収集したデータを分析し、問題の根本原因を理解した上で、具体的な改善策を講じることが重要です。例えば、ハラスメント防止研修の実施、適切な労働時間管理、公正な評価制度の見直しなどが挙げられます。これらの改善策を継続的に実施し、その効果を定期的に検証することで、従業員が安心して働ける環境を作り上げることができます。退職代行の利用は、企業にとって組織の課題を明らかにする機会でもあります。これらの要因を真摯に受け止め、改善に取り組むことが、従業員の定着率向上と企業全体の活性化に繋がります。

相談窓口の設置

従業員が抱える悩みや不満を早期に把握し、問題解決を図るためには、相談窓口の設置が有効な手段です。特に、ハラスメントに関する相談窓口は、2020年6月施行の改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)により、大企業に設置が義務付けられています。これは、パワーハラスメントだけでなく、セクシュアルハラスメントやマタニティハラスメントなど、あらゆるハラスメントに対応できる体制を整備することが望ましいとされているためです。中小企業も2022年4月から義務化の対象となりました。

相談窓口は、社内に設置するだけでなく、外部の専門機関に委託することも可能です。外部相談窓口は、匿名での相談がしやすく、従業員が社内の人間には話しにくいデリケートな内容も相談しやすいというメリットがあります。弁護士事務所や社会保険労務士事務所に委託することで、専門的な知識に基づいた適切な対応が期待できます。

相談窓口を設置するだけでなく、その存在を従業員に周知し、利用しやすい環境を整備することも重要です。相談内容に応じた適切な対応ができる担当者を配置し、相談者のプライバシー保護を徹底することで、従業員は安心して相談することができます。 相談窓口の設置は、従業員の安心感を高め、職場環境の改善やハラスメントの未然防止にも繋がります。

まとめ

近年、退職代行サービスを利用して退職する従業員が増加しています。企業は、退職代行サービスからの連絡を受けた際に、冷静かつ適切な対応を取る必要があります。退職代行サービスは、弁護士、労働組合、民間業者の3種類に大別され、それぞれ法的な権限が異なります。そのため、連絡してきた業者の身元や資格を確認し、その権限に応じた対応方針を見極めることが重要です。

初動対応として最も重要なのは、従業員本人の退職意思を正確に確認することです。第三者によるなりすまし等の可能性も考慮し、委任状の提出を求めるなど、本人からの正式な依頼があることを確認しましょう。また、従業員の雇用形態(無期契約か有期契約か)によって退職に関する法的なルールが異なるため、雇用契約書などで確認することも重要です。

退職手続きにおいては、正式な退職届の提出を依頼し、貸与物の返却方法や期日を明確に伝える必要があります。未払い賃金や退職金については、就業規則等に基づき適切に処理します。有給休暇の消化についても、労働者の権利として適切に対応することが求められます。

そして退職代行を使われた背景を分析し、職場環境の改善や従業員との信頼関係構築に努めることも、今後の再発防止には不可欠です。相談窓口の設置やハラスメント対策の徹底なども、従業員が安心して働ける環境整備につながります。これらの対策を通じて、退職代行サービスに頼る必要のない組織文化を作り上げていくことが、企業にとって長期的なメリットとなります。

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