現在、採用市場では少子高齢化により人手不足が深刻化しています。労働人口が減り続けるのに対し、企業側の求める人材要件は高度化の一途をたどっており、とくに即戦力となる優秀な人材層の獲得競争が激化しています。
従来の採用は求人広告やエージェントを用いて「転職意欲が顕在化している求職者」という限られたパイを奪い合うことが前提となっていました。しかし、売り手市場へと採用が変化する中で、このような手法だけでは採用はますます難しくなるばかりです。
そこでまだ転職をそこまで考えていない転職潜在層へとアプローチ対象を広げるという採用マーケティングの考え方が注目されるようになりました。
人材の流動性が高まり、求職者が会社に求める価値観は多様化しています。かつてのように知名度や待遇、安定性だけではなく、様々なことが重視されるようになりました。
Wantedlyの調査によると求職者が転職先に求めることは、給与水準だけでなく、有意義な仕事やカルチャーマッチといった項目も上位に来ています。こういった会社の中身の話を伝えるのに採用マーケティングは適しています。どんなことを会社は目指しており、どんな人が働いているのか。こういったことをコンテンツ化し、広く発信していくのです。
入社前に会社のことをより深く理解してもらうことは、選考辞退やミスマッチによる早期離職を防ぐうえで非常に重要です。実際、退職理由の上位には「事業内容がイメージと違った」「職場環境に不満がある」「カルチャーギャップを感じた」などがランクインしています。
このように、時代の変化に伴い、採用への考え方をアップデートする必要があります。
【参考】パーパスとエンゲージメントに関する調査結果
https://www.wantedly.com/hiringeek/recruit/pr_20230221/
労働人口の減少が引き起こす変化
労働人口の減少は、企業にとって深刻な課題です。少子高齢化が進む中で労働人口が減少し、優秀な人材の確保がますます難しくなっています。このような背景から、企業はより効果的な採用マーケティングを必要としています。パーソル総合研究所の「労働市場の未来推計2030」によると、2030年には人材が644万人不足すると推計されています。リクルートワークス研究所の「大卒求人倍率調査(2022年卒)」によると、2022年度は民間企業の求人総数が67.6万人に対し、学生の民間企業就職希望者は45.0万人でした。つまり、民間企業への就職希望者数に対して求人の総数が22.6万人超過しており、限りある優秀な人材を各企業で取り合う状況が続いているのです。
人口減少に伴い、従来の採用手法だけでは必要な人材を確保できないことが増えています。そのため、特定のターゲット層に向けたパーソナルなアプローチやデジタルを駆使したマーケティング手法が重要となります。特にコロナ禍でも売り手市場が続いている現在、企業間の競争が激化しています。このような状況下で、いかに求職者から見つけてもらい、マッチングするかが目下の課題となっています。そして、リモートワークの普及や多様な働き方が求められる現代において、適応力のある企業こそが将来的に優位に立つことが期待されます。
【参考】労働市場の未来推計 2030
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/spe/roudou2030/
【参考】大卒求人倍率調査(2022年卒)
https://www.works-i.com/surveys/report/210427_kyujin.html
多様化する採用手法の活用
現在、採用手法は大きく多様化しています。これにはインターンシップ、リファラル採用、オンラインプラットフォームを利用したエントリーなど、多岐にわたる方法が含まれます。その背景には、求職者の期待や行動パターンの変化があります。特に若年層は、SNSなどのデジタルチャネルを通じて企業情報を収集し、自身に合った企業を選ぶ傾向が強まっています。そうした流れに乗り、企業は多様な採用手法を活用してターゲットに合ったアプローチを行うことが求められます。
さらに、近年ではリモートワークやオンライン面接が普及し、地理的な制約を受けずに優れた人材を採用できるようになっています。特にグローバル人材の採用においては、多様な文化背景を持つ人材を引き込むためにも、このような柔軟な採用手法が重要です。また、AIやビッグデータを活用した候補者のスクリーニング技術も進化しており、効率を上げるサービスが開発され、適材適所の人材を見つけ出す手段として注目されています。
これら多様な採用手法を駆使することによって、企業は従来の枠組みにとらわれない多才な人材を引きつけることが可能となります。多様化する採用手法を戦略的に活用することで、企業はより広範囲にわたって優れた人材を確保する道を拓くことができます。
新卒採用の早期化・長期化
新卒採用の早期化は、多くの企業が優秀な学生を他社に先駆けて確保するためにますます重要視されるトレンドです。企業は大学の学年が上がる前から、インターンシップやサマー・ジョブなどの手法を活用して、学生との関係を築き、早期から働く環境や企業文化を体験させる取り組みを行っています。これにより、学生は早い段階で企業の魅力を知り、入社意向を高めます。企業にとっても、優秀な人材を他社に奪われるリスクを軽減することができます。このような早期採用戦略は特に大手企業間で顕著ですが、その影響は中小企業にも波及しており、全体として市場の競争が激化しています。結果として、学生も早期から就職活動を意識せざるを得ない状況にあり、大学生活の早い段階でキャリア形成を考えるようになっています。
新卒採用の長期化は、企業と学生との間でより深い信頼関係を築くための重要な手段です。企業は長期的なインターンシップや継続的なコミュニケーションを通じて、学生に対する理解を深めると同時に、企業の価値観や働く環境を伝えることを目指しています。また、長期間にわたる接触によってミスマッチのリスクを軽減し、入社後の離職率を低減する狙いもあります。長期化は採用活動の戦略の一部として導入されることが多く、特に技術職や専門職ではプロジェクトを通じて実践的なスキルを評価する機会として位置付けられています。企業にとっては、採用活動の長期化により、学生の適性や意欲をより正確に見極めることが可能となり、一方、学生は企業との長期間の接触を通じて、入社後のキャリアビジョンをより具体的に描くことができます。これにより、両者の関係が強化され、就職後の安定した雇用関係が期待されます。